私は渋沢になりたい

去年の話になってしまいますが、藤田咲さんが出演なさっていると言うことで、クロジ第11回公演「かみさまのおかお」を観に行って来ました。


咲さんの初の本格的な舞台、しかも次があるかどうか分からないとなれば、ファンとしては複数回みたいところでしたし、咲さんとダブルキャスト福圓美里さん版の方にも興味はありましたけれども、都合が付かなくて、観られたのは12月23日のマチネのみ。咲さん千秋楽でした。


会場は六本木の俳優座劇場。いわゆる小劇場ですし、キャスト人気もあって、チケット争奪戦ではヒヤヒヤしましたが、何とか8列目の右寄りの席を確保。それなりに舞台には近かったものの、役者の細かい表情まで見るためにはもうちょっと前が良かったなあ。


開演は14時。ダブルカーテンコールまで含めて、終演は16時5分。休憩なしの2時間強の公演でした。


出演者等(敬称略)は以下の通り。


森悠
演出
三浦佑介
キャスト
久須乃星子能登麻美子
藤田侑吾鈴木達央
久須乃弓香:松崎亜希子
久須乃桐彦:三原一太
久須乃奈江子木村はるか
久須乃あまね藤田咲
渋沢光:中泰雅

幼い頃神様に「なった」女性とそれを取り巻く人々の物語。冒頭から登場人物間に渦巻く歪な空気に惹き込まれ、中盤以降、それぞれの抱えて来た想いの爆発にはただただ圧倒されました。クロジの過去作は「きんとと」しか観たことがなくて、その時の森脚本を私は酷評していたので、正直今回もあまり期待はしていなかったのですが、脚本家・森悠に対する認識を改めざるを得ませんでした。
ラストまで観て、これは星子1人だけ救われていないじゃないかと思いましたが、パンフレットの前書きには「人工的に作られた神様が(中略)未完成な人間になっていく様はきっととても美しいだろうと思うのです」って書いてあるんですよね。私にはそんなポジティブな受け取り方は出来なかったなあ。星子は結局、神様にも人間にもなれなかったんじゃないかと。
しかし何はともあれ、星子役の能登さんの芝居は素晴らしかったですわ。浮世離れしたところもありつつ、やっぱり人間臭さも捨て切れない星子を見事に演じ切っていました。近年のアニメで声を聞きながら常々思っていたことですが、この先どんな役者になってどんな演技を見せてくれるのか、改めて一層楽しみになりました。
登場人物それ自体として、1番興味深かったと言うか、傍から眺めている分には面白かったのは、侑吾ですね。チャラいヒモ男かと思いきや、あれこいつ意外と芯はしっかりしているぞと見直し掛けたら、やっぱりダメでした、みたいなどんでん返しが何度もあり、見ていて飽きませんでした。


で、咲さん演じるあまねについて。何とセーラー服を来た女子高生の役でした! 事前に情報を得ていなかったら、そのあまりの可愛さに本番中にも関わらず大興奮していたかも。いやもう見た目から言動まで咲さんにピッタリの役でした。渋沢があまねに罵られたり殴られたり蹴られたりするのを見て、中さんのことが羨ましくなってしまったのはここだけの秘密。
他人を拒絶するかのように、そして何かから逃げるかのように、早足で歩くその後姿が印象的でした。後は、桐彦に鎮静剤を打たれるシーンも記憶に強く残っています。得体の知れない薬を打たれるのは絶対にイヤだけれど、針が刺さっているので暴れることも出来ず、恐怖で引きつったあまねの表情は良かったなあ。って書くと、変態みたいですけれど。


終演後はすかさず物販に並んでパンフレットと台本をゲット。
そして入り口外に移動して、twitterで知り合った某氏と初対面。しばらくの間、お話させて頂きました。その方とはそもそも、うたがっせんの感想メールが共に藤田さんで読まれたことがきっかけで相互フォローになったので、今回こうして咲さんの舞台でお会いすることが出来て、感慨深かったです。咲さんが繋いでくれた縁ですね。