「BGN」における「二条乃梨子」

銀杏の中の桜」の舞台裏である「BGN」は祐巳視点で話が進んで行きますが、注目したいのは、祐巳の頭の中で乃梨子は「二条乃梨子」となっている点です。
この呼び方は「BGN」を通して貫かれており、祐巳視点で「乃梨子ちゃん」を見るには「レイニーブルー」を待たねばなりません。
祐巳は(そしてリリアン一般では)基本的に下級生に対して「ちゃん」付けをしており、このことは「BGN」で初対面の瞳子は「瞳子ちゃん」となっていることからも分かります。
では何故乃梨子に対しては「乃梨子ちゃん」ではなく「二条乃梨子」なのでしょうか?
原作にもある通り、祐巳乃梨子がそれまで見たことのない笑顔を志摩子さんから引き出していることに対して複雑な気持ちを抱きました。でもそれ以前から祐巳の中では「二条乃梨子」となっているんですよね。
この「二条乃梨子」と言う呼び方、私にはどうも拒絶の意思が感じられてしまいます。拒絶と言うのは言い過ぎかもしれませんが、少なくともこの呼び方からは乃梨子を仲間として受け入れようと言う気持ちは伝わってきません。
二年生に進級した祐巳にとって、新入生は自分達が築き上げてきた世界への侵入者であり、その代表者が、スール関係においては瞳子、友人関係においては乃梨子でした。
瞳子は自ら積極的に祐巳の世界に進入してきており、祥子様の親戚と言うこともあって、無視したり関わらないようにしたりはできませんでした。一方、乃梨子祐巳の目の前に出現したわけではありませんから、祐巳としては「二条乃梨子」と客観的に扱うことで、その存在を自分とは関係がないものに留めておきたかったのではないかと思います。
と言うかどうも祐巳の親しみが持てるという特性は皮相的なもののように思えてなりません。この辺りは以前書いた、祐巳には友人が少ない云々の話とも関連していますが。
あ、別にだから祐巳が嫌いだと言っているわけではありませんよ。「誰とでも仲良くできる人」よりも「実は腹の中で黒いことを考えている人」の方が個人的には好きです(祐巳擁護に全然なってない)