スール規則制定委員会:学年間の秩序
リリアン女学園は学年間の秩序を重んじている。スール制度はそれを体現しているとも言えよう。
それ故、スール関係は高等部生の間でなら条件なしに発生すると言うわけではない。高等部生同士の組合せとしては9組が考えられるが、スール関係が発生するのはその内3組に過ぎない(下表参照)。
スール関係の成否 | ||
一年生 | 一年生 | |
一年生 | 二年生 | |
一年生 | 三年生 | |
二年生 | 一年生 | |
二年生 | 二年生 | |
二年生 | 三年生 | |
三年生 | 一年生 | |
三年生 | 二年生 | |
三年生 | 三年生 |
この要件はスール関係の発生についての条文にすでに折り込んである。*1
判断が分かれることが予想されるのは留年に伴ういくつかの問題である。これらの問題に関しては慣習が確認できない(原作中に記述がない)からである。規則の制定に当たっては、当事者の利益と学年間の秩序との利益衡量に基づかなければならない。
- 「姉」が留年した結果、「妹」と同学年になった場合、どうなるか?
スール関係は終了しないことが妥当と思われる。スール関係は要件を満たして発生したのだから、事後の事情により学年が一緒になったからと言って有無を言わせず関係を終了させるのは酷であろう。
なおこの結論を採ると、さらに「姉」が「妹」よりも下の学年になることも想定される。この場合もスール関係は終了しないとすべきである。
- 元上級生の現同級生あるいは現下級生を「姉」とする新たなスール関係は認められるか?
原則として認められない。学校における先輩・後輩関係とは、実年齢ではなく外形上の学年に基礎を置いているためである。
とは言え、いかなる場合においても認められないのか?例えば以下のような場合はどうだろうか?
リリアン女学園高等部二年生であるAには、以前から懇意にしている一年生Bがいた。
二学期の終業式を翌日に控えた12月24日、Aは終業式の朝マリア像の前に来てくれるよう、Bに申し出た。Bはこれを承諾した。Aはロザリオを渡すつもりであり、Bもそのことに気付き、これを受け取るつもりであった。
ところが翌25日、Aは学校に向かう途中で交通事故にあってしまう。幸い一命は取り留めたものの、意識不明の重体であった。
100日後、Aは意識を取り戻した。しかし時はすでに4月。三学期の授業及び試験を全く受けることができなかったAは留年し、二年生のままである。一方Bは順当に二年生へと進級している。
この場合に学年が同じであるからスール関係は認められないと言うのではあまりに不憫である。そこで、特殊な事情がある場合には例外的にスール関係を認める措置を施すべきであろう。
今日の条文
(原級留置に関する規則)
- 発生したスール関係は、原級留置によっては終了しない。
- スール関係の発生は、発生時に要件を満たしていなければならない。但し、特殊な事情のある場合においては、「上級生」とあるのは「原級留置以前に上級生であった者」と、「下級生」とあるのは「原級留置以前に下級生であった者」と、それぞれ読み替えることができるものとする。
*1:「スール関係は、上級生が「姉」となる意思を持ってロザリオを引渡し、これを下級生が「妹」となる意思を持って受け取ることによって生じる。」