2回分のあら探し

乙女企画クロジ☆第8回公演「きんとと」の千秋楽を観に行って来ました。初日に引き続き、2回目です。


会場は新宿御苑前のシアターサンモール。
17時5分過ぎから始まって、千秋楽は最後に役者紹介があったので、終わったのは少し遅く、19時20分過ぎ。役者紹介を担当したのは松崎さんでしたが、波多野さんの名前を間違えてしまいましたw それに動揺したのか、以後も役名が出て来なかったり、役者の名前が詰まって上手く言えなかったりと、笑いに溢れる役者紹介となりましたw


出演者等(敬称略)は以下の通り。

演出
清水みき枝
脚本
森悠
原案
乙女企画クロジ☆
キャスト
萩泉:藤波瞬平
玉菱大浦冬華
はま乃木村はるか
雪路:小田久史
福圓美里
常葉:松崎亜希子
若槻仁太郎平野貴裕
泰介:武藤啓太
日下憲夫:吉田智則
日下とう子仙台エリ
芝田市来光弘
戸塚佳正波多野和俊
木澤周二:上田裕之


仙台さん目当てで2回も観た今回の舞台ですが、仙台さん演じるとう子は、どこか抜けていて可愛らしいお嬢さんでした。それでいて、最後には萩泉を鋏で刺そうとするに至る激しさもあり、その際の殺意や、未遂に終わった後の自己嫌悪は、仙台さんを通してこちらにわっと伝わって来ました。
福圓さんについて。前々から、ファンをやっていない声優さんの中では最もその演技が好きな方だったのですが、今回初めて生で観て、芝居と言うものに真摯に向き合っている人なんだなあと感じました。
他に印象に残ったシーンを1つ挙げるとすれば、玉菱の「…違うよ、それは違うよ木澤さん」ですかね。玉菱と木澤の間の亀裂が決定的になるあの瞬間、その空気感が堪りません。


と、褒めるのはここまでで、残りは気になった点をつらつらと。
「きんとと」では、各登場人物が様々な形の恋愛を見せてくれるのですが、中心となるのは睦と萩泉、そして憲夫と萩泉。睦と萩泉については、睦が萩泉に惹かれるのは分かるのですが、萩泉が睦を選んだのは何故なのか、そこがどうにも分かりませんでした。初日でその疑問を抱いたので、千秋楽は最初からそのつもりで観ていましたし、台本も読みましたし、さらにパンフレットにあったショートストーリー「桔泉 -KISEN-」の内容も踏まえて考えてみましたが、やはり納得は出来ませんでした。
そして憲夫と萩泉については、この関係を作中で描く必要があったのでしょうか。はっきり言って、憲夫・とう子・芝田の3人は、出て来なくても話は成立します。何故かと言えば、憲夫達が娼館側の人達に結局何の影響も与えていないからで、まるで役者の人数に合わせて作った余分な付け足しのようでした。仙台エリファンの私としては、言いにくいことですけれども。
時代考証の不徹底もかなり引っ掛かりました。この作品の時代設定は、初見の印象では大正あるいは昭和一桁台で、その印象はパンフレットにある森さんの言(「昭和の初め」)に照らせば正解だったのですが、その割には時代にそぐわない言葉が目立ちました。勿論、わざと時代を無視した言葉を使って笑いを取ると言う手法はあります。例えば、「ガーデニング(台本上は『園芸』)」、「ナチュラルボーンビッチ」、「ビッチ、基本スペック、ちょークール」などはそうでしょう。しかし何を意図するわけでもない、普通の文脈で、「〜じゃん」、「お仕置き1週間コース決定」、「ロリコン」、「ノータリン」、「ホモ野郎」と言った言葉が使われるのには、違和感を覚えました。特に「〜じゃん」は特定の人物に限らず、広く話されていて、おかしいったらありゃしない。
最後に、玉菱が木澤に身請けされるシーン、あそこの文字の演出は失敗だったと思います。私が座ったのが、初日は右端、千秋楽は左端だったせいもありますが、まず文字が読みにくいです。それでも舞台が暗転している間はまだ読めますが、照明が点いてからも文字を出し続けたのは、一体何を考えてのことなのでしょうか。照明によって文字が薄くなってますます判読が難しくなる上、文字を読んでいると役者の動きに注意が向かなくなります。


そんなこんなで、仙台さんの久しぶりの舞台を観られたのは嬉しかったのですが、作・演出の点ではパッとしない作品でした。