マリみてとラテン語 紅薔薇
マリみてに関連が深い外国語と言えば、フランス語(スールとか)、イタリア語(チャオ ソレッラ!)、そしてラテン語です。と言うわけで、これから数回はマリみて世界のラテン語を一つずつ細かく見ていきたいと思います。
でトップバッターはやっぱり紅薔薇さまことロサ・キネンシスです。これが庚申薔薇の学名であることは結構有名ですが、植物学的な話は他のサイトに任せるとして、ここでは言語的な話を。
とりあえず、これがロサ・キネンシス(Rosa Chinensis)の格変化表です。
単数 | 複数 | |
主格(〜は) | Rosa Chinēnsis | Rosae Chinēnsēs |
呼格(〜よ) | Rosa Chinēnsis | Rosae Chinēnsēs |
対格(〜を) | Rosam Chinēnsem | Rosās Chinēnsēs |
属格(〜の) | Rosae Chinēnsis | Rosārum Chinēnsium |
与格(〜に) | Rosae Chinēnsī | Rosīs Chinēnsibus |
奪格(〜から) | Rosā Chinēnsī | Rosīs Chinēnsibus |
赤くなっている母音は、そこにアクセントがあることを示しています。あとēみたいに横棒の付いた母音は長母音です。これらは通常書かれませんが、正しく発音するために付けておきました。
ひとまず格変化って何?とかは置いておいて、正しい発音(古典ラテン語の発音)の仕方を。まず、ラテン語のアクセントは、英語のような強弱アクセントではなく、日本語のような高低アクセントです。よってアクセントのある母音を他の母音に比べて、高く発音します。
次に各母音について。これはだいたい日本語の母音と同じように発音すれば良いでしょう。長母音は短母音の二倍の長さです。
最後の各子音について。rはイタリア語のように巻き舌です。思い切り巻いて下さい。chは元々ギリシア文字のχ(キー)を転写するための綴りで、kの帯気音です。よって発音する時に強い息を伴いますが、語頭のkを発音しようとすると日本人は特に意識しなくても帯気音になりますので、特に気を遣う必要はないと思います。
というわけで、「Rosa Chinensis」は「ロサ・キネーンシス」の方が本来の発音に近いです。
ちなみにrosaは薔薇と言う名詞、chinensisは「中国の」と言う形容詞です。rosaは女性名詞なので、形容詞も女性形にしなければなりませんが、chinensisは男女同形なので、ここでは名詞の性は特に問題になりません。
ついでに、ここでは形容詞が後ろから名詞を修飾していますが、語順を逆にしてもラテン語としては正しい形です。但し、特別なニュアンスがある時以外は、普通、形容詞を名詞の後ろに置きます。
それで、ここまで説明せずに来た「格変化」についてですが、これは英語で言う所のI, my, meのような変化です。英語では主格・所有格・目的格の3つしかありませんが、英語とラテン語の共通の先祖である、印欧祖語にはもともと8つの格がありました。その子孫達(英語・ドイツ語・ギリシア語・ラテン語・フランス語・イタリア語・ロシア語・ペルシア語・ヒンディー語などなど)は段々と格を失っていったのですが、それでもラテン語は古い言葉ですので、6つの格を保持しています。
格と言うのは日本語の「てにをは」ですから、文を作る時にはいつも気を付けなければなりません。たとえば、amo(私は愛する)を使って、「私は紅薔薇さまを愛する」と言いたい場合、Rosa Chinensis amoとすると、「紅薔薇である私は愛する」と私=紅薔薇さまになってしまいます。この場合はRosa Chinensisを対格にして、Rosam Chinensem amoとしなければなりません。