アラビア語の世界 辞書 その2

一昨日「そろそろ注文していた洋書が届きそうな気配もしますし」と書いていたころ、実はその時既に入荷のメールが届いていたんですよね。次の日の朝、Thunderbirdを起動して届いたメールを見た時、「なんでこんな勘は当たるんだろう?」って思いましたよ。
で今日届いたわけなんですが、それはコレです。
ちなみにメインで使っているアラビア語の辞書はこちら。

Arabic English Dictionary of Modern Written Arabic

Arabic English Dictionary of Modern Written Arabic

アラビア語学習者でこれを知らない人はモグリと言っても良いぐらい普及している辞書です。逆に言うと、他にロクな辞書がないってことなのですが。
ところがこの辞書にもいくつか使いにくい点があるんですよね。まず、この辞書は「アラビア語の単語に一対一で訳を与えるのではなく、同じような概念を持つ単語を列挙することによって全体として意味を掴む」ように作られています。例えばكتب(書く)と言う単語の場合、

to write, pen, write down, put down in writing, note down, inscribe, enter, record, book, register; to compose, draw up, indite, draft; to bequeath, make over by will; to give written orders; to prescribe; to foreordian, destine

とたくさんの単語が挙げられています。
この語順ですが、よく使われる意味の順に並んでいるわけではありません。よって、しっくり来る意味に辿りつくのに時間が掛かってしまいます。
そもそもこの方式の辞書は、アラビア語にも英語にもそれなりに通じている人が使うことによって、初めて真価を発揮するものだと思います。初心者から中級者向けの使いやすい辞書が他にあればいいのですが。
もっともこれは辞書の欠点と言えるものではなく、使いこなすのに一定のレベルが必要とされると言うだけのことです。ところが、この辞書には明らかな欠点が別にあります。
この辞書には原本があり、それはドイツ語で書かれていますが、

Arabisches Woerterbuch fuer die Schriftsprache der Gegenwart. Arabisch - Deutsch

Arabisches Woerterbuch fuer die Schriftsprache der Gegenwart. Arabisch - Deutsch

これを英語に訳したのはJ Milton Cowanと言う人です。実はこの人、アラビア語の専門家じゃないんです!
この人はドイツ語の単語を単純に英訳したため、元々の語義を理解するのが難しくなってしまっています。英訳の過程で数々の誤訳・珍訳が生じているからです。
さらに一つのドイツ語の単語に複数の英単語を当てたため、元々多かった訳語数がさらに増えてしまっています。
と言うわけで本当は原本を使った方が良いのですが、ドイツ語はあまり得意じゃないのと値段の高さによって、英語版をしぶしぶ使っています。
そんなこんなで違った感じの辞書が欲しいと言うことで、今日手に入れたのはがラルースアラビア語・フランス語辞書。語義の詳しさではHans Wehrのものに敵いませんし、用例も載っていませんが、逆に言えばそれだけコンパクトで使い勝手は良く、小回りのきく辞書です。巻末に国名一覧とかの付録が付いているのも良し。Hans Wehrは最後の一頁まで辞書本編で付録なんてありませんから。
少し戸惑ったのは、辞書の開き方です。外から見る限りでは左綴じなんですが、アラビア文字は右から左に読むのを重視して、中身は右開きになっています。Hans Wehrは左開きなのでちょっと混乱します。
本当はもう一つ、ラルースの辞書の方が便利な点があるのですが、それを書くと長くなってしまうので、それはまた機会がある時にでも。手短に言うと、英語とフランス語両方を同程度に身につけている人ならば、一般に外国語・英語辞書よりも外国語・フランス語辞書を使った方が良いと言うことです。