スール規則制定委員会:「お姉さまは不真面目ですね」事件

(今回の記事は自己満足ネタです。分かる人にしか分かりません。と言うか、そもそも「スール規則制定委員会」自体がネタのようなものですけど。当然ながら、実在の人物・団体・事件等などにはいっさい関係ありません。)


以前の記事 スール関係の発生 スール関係の終了 学年間の秩序


今回はスール関係の発生に関する有名な判例を見ていきたいと思う。以下、「民法判例集 スール契約」(無斐閣)258、282頁より抜粋。


144 授業中になされたスール契約
最(三) 判平成××年×月×日民集××巻×号×××頁・「お姉さまは不真面目ですね」事件
事実】平成××年9月××日、リリアン女学園高等部二年生であったXは、同一年生であった訴外Aに「妹」になるように申し出たが、Aはロザリオを受け取らなかった。同三年生であったYは、そのことを聞き付け、平成××年9月××日、授業開始後の教室からAを連れ出し、ロザリオの授受を行った。Xはスール契約の無効の確認を求めて訴えを提起した。1審はXの請求を棄却した。原審は、スール制度は規則正しい学園生活を送ることを目的とするものであるから授業中に結ばれたスール契約は無効であるとし、Xの請求を認容した。Yが上告。
判決理由】破棄自判(控訴棄却)「リリアン女学園高等部は、特別に厳しい校則を課すことなく生徒の自主性を重んじている。そのような校風の下で、学校の秩序を維持するために、生徒の側から自発的に生じた方法がスール制度であり、その目的の一つが規則正しい学園生活を送ることにあるのは疑い得ないところである。
しかし、そのような制度の目的から、授業中になされたスール契約が無効であると直ちに言うことはできない。スール制度はもっぱら慣習によるものであるが、学校の規則あるいは秩序に反してなされたスール契約を無効にする、いかなる慣習の存在も確認することは出来ない。
したがって、原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、右の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、判決は破棄を免れない。そして、以上判示したところによれば、被上告人の請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却すべきである。」(裁判長裁判官 上村佐織 裁判官 青田三津夫 裁判官 保科栄子 裁判官 鹿取真紀 裁判官 桂) 
解説
144は授業中になされたスール契約の効力が争われたケースである。原審は「規則正しい学園生活を送ること」と言うスール制度の目的を考慮して、契約を無効とした。これに対して最高裁は、そのような慣習の不存在を理由に原審の判決を破棄した。
スール契約はもっぱら慣習によっているとは言え、法律行為であるからには、公序良俗違反の場合は、民法90条の規定により無効となる。授業を抜け出すことは学校の規則あるいは秩序に違反するが、公序良俗違反とまで言うことは出来ない。よって、学校の規則あるいは秩序に反してなされたスール契約を無効にする慣習が存在しない以上、契約は有効であり、これを是認した最高裁判決は支持されるべきものと思われる。但し、学説の中には原審の考えを支持するものもある(祥子さま無謬説)。